2010年08月14日

ヴォネガットの演説

今週も慌ただしく過ぎて行きました。

米海兵隊に抗議する臨時議会に、
那覇市の公共交通を考える特別委員会、
いっせい地方選挙への応援に各種会議。

仕事だけでなく個人的にも、
携帯電話の機種変更を行い、
最新技術に追いつくために悪戦苦闘しました。

便利になったぶん、余計に忙しくなった気もします。

ちょっと疲れた身体で覗いた本屋さんで、
カート・ヴォネガットの新刊
『追憶のハルマゲドン』(早川書房)をみつけました。

新刊といってもヴォネガットは二〇〇七年に亡くなった。
この本は、死の直前に書きあげていたスピーチ原稿や、
未発表の短編などで構成されたものです。

急逝の直後に出版された『国のない男』も、
もちろん良かったけれど、
この『追憶のアルマゲドン』は、
戦争を描いた作品でまとめられていて、興味深く読みました。

戦争を描くといっても、
お知識人やご教養のあるみなさんが
顔をしかめるような、ヴォネガット特有のあの文体で書かれています。

ユーモアや毒舌で戦争を書くほどに、
戦争の愚かしさが浮かび上がってくる。

彼の作品が世界中の人々に愛されている理由は、
そのユーモアや毒が、本気で、
しかしたっぷりの愛情を込めて語られているからだと思います。

アメリカ人であるヴォネガットが経験した第2次世界大戦。
ドイツで捕虜となり、アメリカも含む連合軍の攻撃で、
一夜のうちに10万人以上の一般市民が犠牲となった
ドレスデン空爆を体験したヴォネガット。

彼の作品には、戦争への激しい怒りと、
アメリカへの憎愛、そして人々への優しいまなざしがあります。

愚かな人類への深い愛情。
悲観的な未来から見える微かな光。

亡くなる直前、ヴォネガットは2週間後に
予定していた大学での講演原稿を書いていました。

その原稿には、いつものヴォネガット爺さんの
チャーミングな毒舌がちりばめられています。

「さて、この終末の時代に、われわれはどのように行動すればよいのか?
 もちろん、お互いに対してとびきり親切であるべきです。
 しかし、それと同時に、あまり真剣にならないようにも心がけるべきでしょう。
 ジョークでうんと気が休まります。 それと犬を飼うこと。」

このあとに、とんでもない発言で演説を締めるのですが…。
ヴォネガット爺さんの咳き込みながら笑う姿が浮かびます。

ヴォネガットの演説


            『いまになってみると 未来大臣を 任命するべきだった』



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Posted by 比嘉みずき at 19:40 │読書