2009年12月25日
本当の贈り物
那覇は朝から雨のクリスマスです。
昨日は久し振りに休暇をもらい、
一日中、本を読んだり、レコードを聴いたりして、
ゆっくり部屋で過ごしました。
今年読んだ本のなかで、面白かったものに、
ポール・オースター編『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』新潮社
を挙げたいと思います。
この本は、アメリカの作家ポール・オースターが、
自身のラジオ番組で、全米のリスナーから寄せられた体験談を集めたものです。
オースターが付けた条件はふたつ。
ひとつは『実際に起こった事実でなければならないこと』。
ふたつに『ラジオで紹介できるくらいの短いもの』。
「誰でもひとつくらい面白い話をもっているでしょ」と集められた物語の数々。
今日はその本の中から、クリスマスにちなんだお話を紹介したいと思います。
***
『ファミリー・クリスマス』
(これは父から聞いた話だ。1920年代前半、私が生まれる前にシアトルであった
出来事である。父は男6人、女1人の7人きょうだいの一番上で、
きょうだいの何人かはすでに家を出ていた。)
家計は深刻な打撃を受けていた。父親の商売は破たんし、求職はほとんどゼロ、
国中が不況だった。その年のクリスマス、わが家にツリーはあったがプレゼントは
なかった。そんな余裕はとうていなかったのだ。クリスマスイブの晩、私たちはみ
んな落ち込んだ気分で寝床に入った。
信じられないことに、クリスマスの朝に起きてみると、ツリーの下にはプレゼントの
山が積まれていた。朝ごはんのあいだ、私たちは何とか自分を抑えようとしつつ、
記録的なスピードで食事を終えた。
それから、浮かれ騒ぎがはじまった。まず母が行った。期待に目を輝かせて、取り
囲む私たちの前で、包みを開けると、それは何ヶ月か前に母が「なくした」古いショール
だった。父は柄の壊れた古い斧をもらった。妹には前に履いていた古いスリッパ。弟
の一人にはつぎの当たった皺くちゃのズボン。私は帽子だった―11月に食堂で忘れ
てきたと思っていた帽子である。
そうした古い、捨てられた品一つひとつが、私たちにはまったくの驚きだった。その
うちに、みんなあんまりゲラゲラ笑うものだから、次の包みの紐をほどくこともろくにでき
ない有様だった。でもいったいどこから来たのか、これら気前よき贈り物は? それは
弟のモリスの仕業だった。何ヶ月ものあいだ、なくなっても騒がれそうにもない品をモリ
スはこつこつ隠していたのだ。そしてクリスマスイブに、みんなが寝てからプレゼントを
こっそり包んで、ツリーの下に置いたのである。
この年のクリスマスを、わが家の最良のクリスマスのひとつとして私は記憶している。
ドン・グレーヴス
アラスカ州アンカレッジ

ええ話や!モリ坊、お前こそ本当のサンタはんや!
昨日は久し振りに休暇をもらい、
一日中、本を読んだり、レコードを聴いたりして、
ゆっくり部屋で過ごしました。
今年読んだ本のなかで、面白かったものに、
ポール・オースター編『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』新潮社
を挙げたいと思います。
この本は、アメリカの作家ポール・オースターが、
自身のラジオ番組で、全米のリスナーから寄せられた体験談を集めたものです。
オースターが付けた条件はふたつ。
ひとつは『実際に起こった事実でなければならないこと』。
ふたつに『ラジオで紹介できるくらいの短いもの』。
「誰でもひとつくらい面白い話をもっているでしょ」と集められた物語の数々。
今日はその本の中から、クリスマスにちなんだお話を紹介したいと思います。
***
『ファミリー・クリスマス』
(これは父から聞いた話だ。1920年代前半、私が生まれる前にシアトルであった
出来事である。父は男6人、女1人の7人きょうだいの一番上で、
きょうだいの何人かはすでに家を出ていた。)
家計は深刻な打撃を受けていた。父親の商売は破たんし、求職はほとんどゼロ、
国中が不況だった。その年のクリスマス、わが家にツリーはあったがプレゼントは
なかった。そんな余裕はとうていなかったのだ。クリスマスイブの晩、私たちはみ
んな落ち込んだ気分で寝床に入った。
信じられないことに、クリスマスの朝に起きてみると、ツリーの下にはプレゼントの
山が積まれていた。朝ごはんのあいだ、私たちは何とか自分を抑えようとしつつ、
記録的なスピードで食事を終えた。
それから、浮かれ騒ぎがはじまった。まず母が行った。期待に目を輝かせて、取り
囲む私たちの前で、包みを開けると、それは何ヶ月か前に母が「なくした」古いショール
だった。父は柄の壊れた古い斧をもらった。妹には前に履いていた古いスリッパ。弟
の一人にはつぎの当たった皺くちゃのズボン。私は帽子だった―11月に食堂で忘れ
てきたと思っていた帽子である。
そうした古い、捨てられた品一つひとつが、私たちにはまったくの驚きだった。その
うちに、みんなあんまりゲラゲラ笑うものだから、次の包みの紐をほどくこともろくにでき
ない有様だった。でもいったいどこから来たのか、これら気前よき贈り物は? それは
弟のモリスの仕業だった。何ヶ月ものあいだ、なくなっても騒がれそうにもない品をモリ
スはこつこつ隠していたのだ。そしてクリスマスイブに、みんなが寝てからプレゼントを
こっそり包んで、ツリーの下に置いたのである。
この年のクリスマスを、わが家の最良のクリスマスのひとつとして私は記憶している。
ドン・グレーヴス
アラスカ州アンカレッジ
ええ話や!モリ坊、お前こそ本当のサンタはんや!
Posted by 比嘉みずき at 11:38
│読書