ひび割れた手

比嘉みずき

2014年11月14日 23:17

街頭演説で嬉しいのは、
これまで生活相談で関わった
みなさんとの再会です。

わたしの演説が
終わるのを待ちかねて、
みなさん駆け寄ってくれます。

「みずきさ〜ん!」

もうそれだけで、
目頭が熱くなってきます。

「あの時はお世話になりました。
 いまは元気に暮らしてますよ!」

初めて相談に来た時は、
うつむいてばかりいたあの人が、
一緒に問題を解決していくなかで、
前を向いて、
明るい表情になっていく。

市議会議員をしていて
一番嬉しい瞬間です。

       *

二年前に相談にのった、
お母さんと再会しました。

母子家庭で育った、
お母さんの一人娘は、
高校でとても成績が優秀な子でした。

大学に入学して、
授業料の奨学金は借りたけれど、
入学金がどうしても支払いできない。

銀行をまわり歩いたけれど、
収入が低すぎて借入もできない。

困り果てて、
わたしの無料生活相談事務所に
駈け込んできました。

那覇市の職員と連携して、
母子寡婦福祉資金を利用して、
問題を解決できました。

        *

あれから二年が経ち、
娘さんは大学で一生懸命
勉強しているそうです。

本当にありがとうございました。
本当にありがとうございました。

お母さんは何度もお礼を言いながら、
目を真っ赤にして、
お辞儀ばかりする。

わたしのほうが胸が詰まってくる。

真面目に暮らしている人たちが、
どうしてこんなに
暮らしにくい世の中なんだろう。

お金のあるなしで、
どうして子どもたちが、若者たちが、
保育や教育を受けられないのだろう。
諦めなければいけないのだろう。

         *

沖縄の選挙はいつも、
基地問題が大きな争点になるけれど、
わたしは叫び声にもならない、
小さなため息を忘れない。

うつむき歩いている人たちが、
少しでも顔を上げてもらえるように。
政治がやるべき仕事は山ほどある。

ひび割れた手で強く握ってくれた、
あの人たちの手を絶対に忘れない。





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